ちゃらんぽらんの日記

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フェアトレードを考える


フェアトレードとは「公正な価格での取引」という意味ですが、国連が2030年に達成を目指しているSDGs(持続可能な開発目標)の2030アジェンダとも関連しています。

「途上国からの搾取を是正するために適正な価格で取引する」という言い方もよく見受けます。(但し、用語上は正しくありませんので後述します)。コーヒーなどの茶や手工芸品、ワインもこれらのフェアトレードの監視すべき品目となっています。

これらの一次産品や手工芸などの軽工業は製造原価を抑えるために児童労働などが横行してきた分野でもあり、貧困地域の児童は教育を受けることもできずにいつまでたっても貧困から抜け出すことができない、という問題を解決するために70年前から運動が始まったそうです。

フェアトレードの仕組みは、それに賛同する企業が入会金を支払ったうえで基準をクリアし、仕入れ価格に上乗せ料金を継続的に払う。それを認証団体は寄付の形で貧困地域の団体(組合)に還元し労働者の手に渡るというものです。その仕組みに参加した企業はフェアトレードのマークを製品に掲示することができます。

このようなマークが必要ということは世の中に反対語である「アンフェア・トレード(不公正な取引)がどれだけ横行しているかということかもしれません。基本的には大賛成ですが、しかし「何か良いことやっていますよ!」的な流行というのは長続きもせず、新たな弊害が知らないうちに誕生することもあるので、私はその本質をちょっと考えようと思うのです

このようなアンフェアトレードが起こる原因は、大きく言って3つあると思います。
1)生産品目の『価格下落の問題』
2)生産から消費に至るまでの経路の中でしわ寄せを誰が負担するかという『分配の問題』
3)児童などの『社会的な弱者への非人道性の問題』です。

例をあげれば、嗜好など消費側の変化などが起きて、一時的にコーヒー豆が売れなくなった。そのために飲料メーカーなどの大手販売ルートが値下げ競争となった。そのしわ寄せが貧困地域の生産者に押し付けられて、無賃金や低賃金の児童労働が強制された。こんな感じでしょうか?この1〜3までは実は因果関係の順番と問題の重大さも表しています。

一番目の価格下落の問題:
価格下落が起きるのは、「供給過剰」であるか、「過当競争による廉売」であるかどちらかでしょう。

そう言えば、「ダンピング」はひと昔前までは「重大な不公正取引」でしたが、ドッグイヤーで価格下落が当然の半導体や関連製品が出回ってからはあまり聞かれなくなりました。

ダンピングをして良いもの(大量生産の工業品)とダンピングをしてはいけないもの(人手のかかる農産品や手工芸品など)は明確に区分けする必要があるようです。

フェアトレード運動には賛成ですが、国際的にも不公正取引であったダンピングや独占禁止などの伝統的な取引監視の仕組みを強化するという方法論も依然有効のように思えます。

もうひとつ、供給過剰は生産調整をすみやかに行うかまたは市場への供給量を減らすかということになります。今でも原油産油国OPECや非OPEC諸国で減産合意ができそうとか決裂しそうとか騒いでいます。昔は、需給調整は卸(問屋)の機能だったといえます。在庫をすることで安定供給または需給調整ができていたわけです。昔は今よりもはるかに劣った生産技術で、特に農業は天候や気候災害に左右されていました。しかし、需要と供給のギャップによる価格変動についてはある程度問屋の在庫がクッションがわりになっていました。

二番目の分配の問題:
今は、中間流通は悪だという議論で問屋が姿を消し、その代わりに販売者である大企業の圧力から「調整の痛み」が問屋ではなく、「生産者に直接押し付けられる構造」となっています。生産者の損益分岐点、中間流通業者の損益分岐点、販売側大企業の損益分岐点の合計を「品目システム全体の損益分岐点」という言い方をすれば、システム全体の必要人員は価格変動があろうと維持される必要があります

しかし、フェアトレード対象品目は往々にして販売側大企業が上場企業で株主への利益圧力があり、しわ寄せはドンドン生産者(弱者)側に押し付けられる構造となっていることが問題です。本来的には、CSR(企業の社会的責任)もこれを問題視しなければなりません

ただ、搾取という言葉は適切ではなく、大学教授ですらフェアトレードの説明にこの言葉を使っているのは残念です。搾取とは「無報酬の強制労働」です。資本主義提唱者のマルクスがすでに労賃と搾取の関係を整理しています。ただ、労賃は必要労働分(労働者の生計費)の維持であり、資本家は必要労働分以上の成果を求める。それが余剰であり、余剰は資本家の持分に帰属すると。

この「必要労働分の労賃」を十分に与えず誤魔化していることが問題です。この誤魔化しは必ずしも販売側大企業だけではなく、例えばフェアトレードの結果、還元された資金を貧困国の生産者組合の幹部が誤魔化し、労働者に渡さないという可能性もあります。この力関係の強弱構造はシステム全体のどの段階の組織においても可能性があるのです。そういうことを考えれば、最終的には「貧困国の労働者にキチンと十分な労賃が支払われているかを監視して、問題企業を告発する仕組み」を構築することのほうが重要とも思えます。

三番目の非人道性の問題は、論外で罰則(財産没収)などの法的強制力が必要と考えます。

フェアトレード品目以外でも
よく考えると、このアンフェアトレードは対象品目だけの話ではなく、日本の消費者が普通に購入している百円均一やスーパーのチラシセールなどでも同様です。普通の大人が「安く買うことが賢い消費者」という単純な図式はそろそろ卒業しなければなりません「適正な価格」という言葉は抽象的で適切ではありません。それはいくらなのかは誰も分かりません。しかし、「公正ではないアンフェアな価格」というのはその背景状況を伝えることで買い控えることができ誰もが常識的に判断できます

「公正な価格で取引されたモノを買いましょう」