ちゃらんぽらんの日記

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印象に残った3人と印象的な新世代

3人の人物を思い出した。
マハティール元首相、松本啓二氏(故人)と山田方谷(江戸時代)である。

マハティール元首相:
日本が存在しない世界を想像してみてください。
日本なかりせば、欧米が世界の工業国を支配し、欧米が基準と価格を決め、欧米だけにしか作れない製品となり、世界中の国が購入に際してはその独占的な価格を押しつけられていただろう。
日本と日本のサクセス・ストーリーがなかりせば、東アジア諸国は模範にすべきものがなかっただろう。東アジア諸国でも立派にやっていけることを証明したのは日本である。
日本なかりせば、世界は全く違う様相を呈していたはずだ。富める北側社会はますます富み、貧しい南側社会はますます貧しくなっていたと言っても過言ではない。北側のヨーロッパは、永遠に世界を支配したことだろう。

これは、92年の頃のマハティール氏の発言。97年に起きたアジア通貨危機では唯一マレーシアのみがIMF管理に抵抗し、通貨が使えなくとも一時はブラジルとの物々交換をしてまで危機を乗り切った。

その10年後には、日本の経済だけではなく、社会や教育を含めて不満を抱き見習うべき点がないと失望している。「西洋崇拝」が日本の倫理や価値観を低下させ、金髪に染める日本の若者文化を批判した。

東南アジアや中東諸国が日本に敬意を抱く理由は、この「日本なかりせば」の言に集約されている。マハティール氏はオモテづらの話をしているのではない。日本が世界に対して果たした役割の根本に、単なる技術だけではなく、背景として培われてきた文化や風土を含めた高い社会性を認めているのである。

松本啓二氏(故人):
森濱田松本法律事務所の創業パートナー。同氏との出会いは94年。日米包括協議でクリントン政権は強硬とも思える日本市場の開放を求めていた。ある日、直属ではない上席の常務から「お前ヒマだろ、これやってくれ」と言われた。ヒマじゃないのは誰がみても分かるのにである。公的年金への市場開放を私募投信かパートナーシップ形式で参入することを日本政府は合意したものの何も進んでいないとのこと。その仕組みを作れという。

「はあ?」・・・結局、2日で信託法に関する文献を読破し、1日で英米法のパートナーシップの法制度を読破し3日で案を作った。しかし、最終的には法律事務所で仕上げてもらう必要があり、大手弁護士事務所を当たったもののどこも手一杯。当時、特許庁のとなりのボロボロのビルで受けてくれたのが松本先生だった。当時は合併する前で濱田松本法律事務所。ボロボロのビルに、ぼさぼさの髪と無精髭。おまけに微かに酒臭い。まるで小説の登場人物である。大丈夫かなと思いつつ用件を話すと「理解しました」と。確認をいくつかすると本当に理解している。「すごいな、この人」とその場で松本先生にお願いすることにした。ただ、さすがにITリテラシーはなく当時はWindows95も発売されておらずFAXでウチの会社と弁護士事務所とNY拠点とケイマン諸島をやりとりするという。呆れて、松本先生の事務所のPCにインターネットとメールをインストールしてあげて、まだ普及途上だった携帯電話も購入してもらった。結局、当社案が通り政府を実行し現在も有名な外資系金融サービス2社が第一弾として日本に参入した。当時の会社は「お豆腐一丁分に欠ける程度」の資産をご褒美に受託し契約資産も数兆円となった。

その後、松本先生の事務所は霞ヶ関ビル、大手町、丸の内と最大級の法律事務所となったが、松本先生は2007年に同事務所を離れ虎ノ門に個人の法律事務所を開設した。法律家の真の法律家たるにこだわる。私の印象では、この時の方が90年代半ばのように生き生きとしていたような気がする。伊豆の別荘(本宅?)では農業を楽しんでおられたようだ。「何でも相談してきてください」と暖かい言葉をもらったが何も相談することはしなかった。今は高尾に近い霊園で永眠されている。小さいボロボロの事務所という見かけに惑わされず「すごいな、この人」という直感だけで巡り合った珠玉の人物だった。

山田方谷
備中松山藩という小藩にいながら、江戸後期以降の日本の発展の礎となった人物。陽明学という「合理主義」と儒学という「道徳」のバランスの大切さを実践した。ガンジーが「道徳なき商業は悪」とした考えにも通じるものがある。

あまり有名ではないが、山田方谷の考えが、越後長岡藩河井継之助二松学舎創立者の三島中洲、渋沢栄一などに継承されていく。山田方谷の「至誠惻怛(しせいそくだつ)」という真心と慈愛の精神は、ユネスコ文化遺産のクレスピ・ダッタ(イタリアのクレスピ村)の資本家と労働者の共存の町などのように、世界的にも通用する考え方である。

私自身、山田方谷の姿を見て欲しいとお話しして、考えを一にしてお付き合いをさせていただいている方も多い。

これらの、お三方の共通項は「小さいけどスゴイ」ということである。大企業だから信用できて、中小企業だから信用できないという考えは間違いであるし、アジアの小国でも、ボロボロのビルの事務所でも、田舎の小藩でも、スゴイ人物はいるのである。

日航東電マクドナルド、シャープ、東芝などなど。規模の追求が自浄作用を阻害する例が多すぎる。

しかし光明は、ソーシャル・ビジネスにあるように思える。東京の中心地区でも企業や個人にとっての社会との関わり方を実践を通して革新していこうとする多くの人たちがいることを知った。もちろん、玉石混交ではあるものの、中にはとても感心に値する若い世代の方たちも確実にいるのである。印象に残った新世代。これが、唯一の救いかもしれない。