ちゃらんぽらんの日記

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低く暮らす(3)

外国人観光の話なのに、なんでタイトルが「低く暮らす」?

これからが景観の話です。

欧州5カ国は「景観」をとても大切にしています。だから観光客も増えるのです。観光客は景観を楽しみに来るのですから。

例えば、英国ではセント・ポールズ・ハイトという景観規制があります。聖ポールズ寺院の高さを上回る建築は禁止するというものです。また、伝統的な建物を壊してビルを建てないようイングリッシュ・ヘリテージから補修費用の補助も支給されます。ちなみにタックスヘブン(租税回避地)として有名な英領ケイマン諸島の法律は昔、島で一番高いヤシの木を超える建築物は禁止というのが唯一のルールでした。

フランスでは紡錘体規制というのがあります。景観として維持すべき建造物を決めて最も良い景観地点を決めます。その建造物の左右の最高部からヒトの目線の高さまでの三角形を決めて地上までの紡錘体を想定ラインを決めます。その想定ラインを侵食する景観侵害は認めないというものです。イタリアでもガラッソ法で事細かに景観侵害に対する規制があり、ドイツでも景観を侵害する道路や屋根の傾斜、棟方向、屋根材や窓の形まで細かに規制されて全体の景観を維持しています。

それでは不動産所有者の権利が制限されるではないか?」そう思う人も多いかもしれません。そのとおりです。「景観という公共財が優先され私権が制限されている」のです。特にイタリアやフランスは私権の制限に対して補償は行われないこととなっています。これらは1980年代半ばに制定された法律で定められています。日本では屋外広告だらけですが、欧州では屋外広告も敬遠され厳しく制限されています。

日本では1919年に風致地区という考え方が登場しました。その後は1975年に伝統的建造物群保存地区という制度ができ現在では、山形県・東京都・神奈川県を除く43道府県109地区が存在します。これは文化財という点だけではなく面としてとらえた意味で画期的でした。この時点までは日本の取り組みは世界にとっても先端的でした。しかし、その後は、輸出大国・不動産バブル・モータリゼーションによるロードサイドビジネスの隆盛・不良債権と狂気の四半世紀では放置され、いつのまにか1980年代半ばの欧州のほうが先進的な取り組みを行い景観を保存したのです。

仕事や旅行で日本の半分近くの都市を訪問しました。しかし、どこも同じで大手スーパー、大手家電量販、大手外食チェーンなどがあるだけで、全く味わいのない「同じ顔」の地方都市が増えていきました。学生だった40年前は信州に行く、関西に行くなどどこに行っても「違った顔」がありました。

<続く>