ちゃらんぽらんの日記

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エネルギー自立の町 -私の試算(その3)-

熱利用の世界の技術には日本で普及していないものがあります。代表的なのはCSP(集光型太陽熱)です。

CSP(集光型太陽熱)サーマル・ストレージ(熱貯蔵)

アラブ首長国連邦UAE)のアブダビマスダールシティがあります。ここではビームダウン型CSPが稼働しています。パラボラのような鏡面でタワーの頂上に集光しそれを地上の一点に反射して集め1千℃近い熱が集まります(ビームダウン型CSP)、そこにはコンクリートブロック製の熱貯蔵庫があります。熱の貯蔵と取り出しは自由なサイクルで設計できます。半年後に熱エネルギーを取り出したり、昼に貯めて夜に取り出すこともできます。私が懇意にしている北欧のベンチャー企業がこの蓄熱の技術を提供しています。

1千℃近い熱というのは使い方も広がります。ボイラー代わりに使ってタービンを回して発電することもできますし、海水をくみ上げて蒸発させてから冷やして飲み水を作ることもできます(タジン鍋のように)。しかし、100℃前後の低熱であっても暖房程度には使えるので、熱貯蔵というのは実に応用範囲の広い技術です。暖房だけではなく、汚泥の乾燥に使ったり、木材の乾燥にも使えます。

いずれにしても、太陽熱と熱貯蔵はとても重要です。発電を前提に考えると日本よりはサハラ砂漠や米国中西部などと適地が限定されるかもしれませんが、すべて発電する必要はありません。

前回の北海道N町の試算で、ヒートポンプで不足する分は太陽光と虫眼鏡と言ったのはこのイメージがあるからです。地中熱利用だけではなく追加的にヒートポンプと岩石の熱貯蔵庫の系統に外部の熱源を接続すれば冬でもポカポカになると思います。

温度差発電の未来

温度差の可能性」はこれだけではありません。温度差があれば発電ができるからです。
世界では海洋温度差発電も注目されていますが、そんな大掛かりなものは政府など任せましょう。ここではゼーベック効果」による熱電効果に焦点を当てます。これは19世紀に発見された現象で金属棒などの物質内部に温度勾配があるとき、両端間に電圧が発生し電子が移動するものです。これを利用したのがp型とn型の半導体を組み合わせた熱電変換素子で、温度差の激しい人工衛星の電源などに利用されています。ただ、温度差を大きくすれば得られる電力大きくなるのですが、まだ微小電力の範疇です。ですから、これも太陽光パネルと同じでN町の面積に素子を敷き詰めても無意味です。

しかし、さらに3年前に面白い技術が東北大で登場します。これが「スピンゼーベック素子」です。この現象は温度差によって、電子が移動する代わりに電子の磁石の性質(スピン)が変わって電気が生じるものです。ゼーベック素子では温度差が電圧差を生み電子が移動するのでそれに伴って発生する熱が温度差の効果を相殺してしまいますが、スピンゼーベックでは電子は移動せずにスピンが変化するだけなので効率が良いのです。さらに構造が磁性体の膜の上に金属膜があるだけのシンプルな二重構造なのでコストも安いのです。これは面積があれば形状は曲がっていても蒸着処理でOKです。極端には塗るペンキのような処理もできます。スピンが発生するエネルギー源は温度差だけではなく、音の振動エネルギーでも起電します。そして今年1月には光エネルギーから起電するスピンゼーベック素子も可能となりました。

例えば、N町の町役場でもホテルでも、スピンゼーベック素子ペンキで屋根や外壁を塗って昼間は太陽光を受けて発電します。同時に太陽熱を集めたコンクリート型蓄熱器に熱を貯めておいて夜間はその温度差で発電をするといった利用が可能となります。

まとめ

こう考えると、N町のエネルギー自立は既存技術である小水力・バイオマス・雪氷熱を駆使しても45%しか賄えませんでしたが、熱エネルギーや太陽熱・太陽光の新たな技術と安価で安全な蓄熱技術の応用で賄える技術的な可能性が芽生え始めてきたようです。
まだ、時間はかかると思いますが、これからはこのような「新技術」が身近になるように思えます。エネルギー自立ができる日もそう遠くはないかもしれません。

これらはいずれも中小企業でも可能性があります。大規模生産で全国を画一的に考える大企業よりは、鉄腕アトムに登場するお茶の水博士のような研究者がいる中小企業やベンチャー企業のほうが向いているかもしれません。